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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)12651号 判決

一 請求の原因1及び3(一)の事実は当事者間に争いがない。

二 本件意匠の構成について検討する。

1 右当事者間に争いのない事実及び成立に争いのない乙第九号証によれば、丸型ダイヤル部、背部、底部を解放し、その他の部分をカバー材料で覆つたもので、カバーの下端の四隅にゴム紐環を設けた電話機カバーの意匠が昭和四九年七月一八日発行の登録第三八二八五六号意匠公報によつて本件意匠の登録出願前に公知となつたことが認められる。

2 成立に争いのない乙第一六号証の一・二、証人河合操の証言と被告代表者尋問の結果により、いずれも成立の認められる乙第四、第五号証の各一ないし四、第六号証の一六・一七、第一四号証、第一八号証の二ないし五及び七・八、被告社員が撮影した写真であると認められる乙第一号証の一ないし四、右写真の密着焼写真であると認められる乙第一〇号証、被告主張どおりの納品書綴であることが認められる検乙第八号証並びに証人河合操の証言及び被告代表者尋問の結果によれば、被告は、その販売にかかる商品を宣伝し、注文を受ける目的で、自社の製品を撮影した写真を、カタログの代用として使用し、各得意先に持参していたこと、右カタログ写真(乙第一号証の一ないし四)及び密着写真(乙第一〇号証)には、別表(一)、(二)の電話機カバーが写されていることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そして、前掲各証拠によれば、別表(一)、(二)の電話機カバーを撮影するために用いられたフイルムは、昭和四八年九月に製造され、その有効期限は昭和五〇年三月であること、被告においては、右電話機カバーを撮影した後、同じフイルムを用いて、社内の様子を女子従業員をいれて撮影したが、右従業員は昭和五〇年四月には退職しているので写真は右の時期より前に撮影されていること、別紙(一)、(二)の電話機カバーは、昭和四八年一〇月ないし一二月に概ね一か月を納期として製造の発注がされ、納期に納品されていることが認められ、右事実に照らすと、右電話機カバーが右の写真に撮影された時期は、昭和四九年二月ないし四月ころであること、また右電話機カバーはその後ほどなくして販売されたことが各認定でき、したがつて本件意匠の登録出願日である昭和五〇年八月八日までには、右電話機カバーの意匠が公知になつたことが認められる。

そして、被告代表者尋問の結果により右電話機カバーと同型の電話機カバーであることが認められる検乙第一号証の一ないし三によれば、右意匠の構成は、いずれも、丸型ダイヤル部、背部、底部を解放し、左側面後部及び背面左側に電話機コードを通す切欠を設け、その他の部分を布で覆つたもので、正面の布の左右両側にそれぞれ縫い縮めによつて不規則に波立たせたひだ飾りを設けた布を外側に向けて一体的に縫着したものであることが認められる。

3 以上の公知意匠を参酌し、成立に争いのない甲第一号証(本件意匠公報)により本件意匠の構成をみると、本件意匠は、丸型ダイヤル部、背部、底部を解放し、左側面後部及び背面左側に電話コードを通す半円形の切欠を設け、その他の部分をカバー材料で覆つたもので、正面のカバーの左右両側端に等間隔の規則正しく折りたたまれているひだを設けていることからなることが認められる。

三 被告製品を示すことにつき争いのない別紙目録及び被告製品であることにつき争いのない検甲第一号証によると、被告製品における意匠的特徴(以下、「被告意匠」という。)は、丸型ダイヤル部、背部、底部を解放し、左側面後部及び背面左側に電話コードを通す三角形の形状の切欠を設け、その他の部分はカバー材料で覆つたもので、正面のカバーの左右両側端に不規則の間隔で波立せた数個のひだを設け、カバーの端部には全体にふちどりがされていることにあると認められる。

四 本件意匠と被告意匠とを対比すると、双方とも、丸型ダイヤル部、背部、底部を解放し、左側面後部及び背面左側に電話コードを通す切欠を設け、その他の部分をカバー材料で覆つた点では共通であるが、反面、本件意匠においては、正面のカバーの左右両側端に等間隔の規則正しく折りたたまれているひだが設けられているのに対して、被告意匠においては、正面のカバーの左右両側端に不規則の間隔で波立たせた数個のひだが設けられている点、本件意匠においては、ふちどりが施されていないのに対して、被告意匠においては、カバーの端部にふちどりが施されている点、本件意匠における電話機コードを通す切欠は半円形であるのに対して、被告意匠における右切欠は三角形である点に相違がみられる。

右の共通点と相違点を含めて全体的観察により本件意匠と被告意匠をみると、右の共通点は電話機カバーとして本来的に有すべき基本的な形状であつて見る人の注意をひく部分ではないことが明らかであるのに反して、右の相違点があることによつて、本件意匠からは過度の装飾を抑えた単純明晰な美感が生ずるのに対し、被告意匠からは装飾性に富んだ美感が生ずると認められるのであつて、両者は、意匠として全体的な美感を異にするものといわなければならない。

したがつて、被告意匠が本件意匠に類似するということはできない。

五 よつて、被告意匠が本件意匠に類似することを前提とする原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却する。

〔編註その一) 本件に関する意匠権は左のとおりである。

1 原告は、次の意匠権(以下、「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を有している。

出願       昭和五〇年八月八日

登録       昭和五二年八月二〇日

登録番号     第四六六二七一号

意匠にかかる物品 電話機カバー

登録意匠     別紙意匠公報記載のとおり。

〔編註その二〕 本件に関する意匠および目録は左のとおりである。

登録意匠

<省略>

<省略>

別紙目録

<省略>

<省略>

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